アカイエカ幼虫における白眼因子, 殺虫剤デイルドリン, アベイト, フェンチオン, フェニトロチオンに対する抵抗性因子の組換率
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概要
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下記の5種の系統を用いて殺虫剤4種(デイルドリン, アベイト, フエンチオン, フエニトロチオン)の抵抗性因子および白眼因子とのそれぞれの間の組換率を調べ, これらの因子の遺伝的連鎖関係を検討した.(1)NADR : アベイトおよびデイルドリンでそれぞれ5代または10代の間, 幼虫淘汰した系統.(2)NAFR : アベートおよびフエンチオンで7代または10代, 幼虫淘汰した系統.(3).NFSR : フエニトロチオンおよびフエンチオンで6〜7代淘汰した系統.これら3系統はNAコロニー(鈴木猛, 1968)から由来したCulex pipiens pallensの系統であり, それぞれの殺虫剤に対するLC_50はMaterials and Methodsに前述されている.(4)ω(白眼)コロニー : 有機燐殺虫剤およびデイルドリンに感受性で, 連鎖群1(性決定因子と同一染色体)の突然変異体である.(5)ru(ruby眼)コロニー : アベイト, フエンチオンおよびフエニトロチオンに対し感受性のコロニーで, 連鎖群2の突然変異体である.上記の2種のコロニーはAutogenyの系統であり, カルフオルニア大学のA.R. Barr教授から分譲されたものである.交配および戻し交配実験の結果から幼虫期の抵抗性(4種の殺虫剤に対してそれぞれ)は単一因子によつてその遺伝が説明される.そして, それらの抵抗性因子の間の組換率は次の通りである.アベイト抵抗性因子(R-Abt)とフエンチオン抵抗性因子(R-Fen)との間は6〜7%であり, R-Fenとフエニトロチオン抵抗性因子(R-Sm)との間は極めて接近しており, 0.2〜0.4%であつた.またデイルドリン抵抗性因子(Ddl)とR-Abtとの間は22%から26%であつた.これら4種の抵抗性因子は連鎖群Iのω因子とは独立的であつた.著者(1969a, b, 1970)が報告した結果と上述の結果を総合すると有機燐殺虫剤の抵抗性因子間の組換率は要約的にDiscussionに図示した通りになるが, 確実な因子の配列順序はより良い形態的なmarkerを用いて決定されるべきである.DldはTadano and Brown(1967)によつてラングーンのC.pipiens fatigansで連鎖群3に存在すると報告されたが, この実験では有機燐殺虫剤抵抗性因子と同じ連鎖群に存在していることになる.これらの有機燐殺虫剤抵抗性因子は著者(1969a, b)によつて連鎖群2(ruと連鎖)に存在すると報告されている事実と相反する結果になつた.この相反する結果がどうして生じたのかは今後に残された問題である.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1970-11-30
著者
-
只野 長夫
INコンサルタント
-
只野 長夫
Department of Parasitology, the Institute of Medical Science, the University of Tokyo
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