牛糞内に生息するハエ類の種内競合に関する研究 : I. ヒメフンバエ幼虫の密度効果
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概要
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ヒメフンバエScatophaga stercoraria L.幼虫の牛糞内生息密度がその後の生育に与える影響を室内実験によって調べた。1.実験室で孵化させた1令幼虫を, 牧草のみを餌としている放牧牛の糞50gあたり1∿50匹と55∿100匹(5匹間隔)の密度で接種し, その後, 蛹化した個体の一定数は個別飼育をした(表1)。2.ほとんどすべての密度区において土中よりも牛糞内で蛹化した。しかし, 10匹区以下の密度区では土中に蛹化する個体が50%を超えた区があった(図1)。これは牛糞の含水率の違いによるものと推察される。3.蛹化率は50匹区までほぼ一定で平均92.7%の高率を示し, 実験に供した牛糞および飼育環境が適正であったことを示している。密度が50匹を超えると蛹化率は漸減し, 高密度区では70%前後であった。蛹期の死亡は低密度区で認められたが, その率は5%前後と低かった(図2)。4.密度が羽化成虫の性比に与える影響はこの実験密度範囲では認められなかった(図3)。5.蛹の大きさに与える密度効果は大きく, 10匹以下の低密度区の蛹と90匹以上の高密度区のそれの平均体積比は雄で1 : 0.34,雌で1 : 0.47であった。また, この密度効果の現れる密度水準は雌より雄のほうが低かったことから雄のほうが密度の影響を受けやすいことがわかる(図4)。蛹の長幅比および蛹の大きさと羽化成虫の翅の長さとの比は蛹の大きさにかかわらず一定で, しかも雌雄間に有意差が認められなかった(図5,7)。6.各密度区における総蛹体積量は低密度区では密度の増加とともに直線的に増加したが, ある密度水準を超えると漸減傾向を示した(図6)。雌雄および幼虫期の死亡率, 蛹の大きさなどを総合的に判断して, 39匹の密度水準から密度効果が顕著に現れるものと考えられる。7. 1令幼虫から成虫の出現までの発育期間は一定密度以上になると有意に短縮した(表2)。8.低密度区で休眠蛹らしい個体が多く出現し, 幼虫期密度と休眼現象との関係の存在が示唆された(図8)。
- 日本衛生動物学会の論文
- 1983-09-15
著者
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