重症クモ膜下出血例Hunt&Kosnik grade IV, Vに対するわれわれの治療戦略
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概要
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重症クモ膜下出血症例の治療成績は決して満足のいくものではないが, 治療をあきらめずわずかながらも改善する可能性があるものに対し, 積極的な外科治療すなわちクリッピング術を行うことで, 驚くほどに改善を示し得る症例も存在する.筆者自ら執刀したクリッピング術723症例のうち105例(14.5%)がHunt& Kosnik(H& K)grade IVであり, また30例(4.1%)がH& K grade Vであった.これらの症例の転帰をGOSで示すと, H& K grade IV例ではgood recovery(GR)13%, moderate disability(MD)13%, severe disability(SD)20%, persistent vegetative state(V)10%, death(D)44%.H& K grade V例ではGR7%, MD3%, SD10%, V23%, D57%であった.いずれも死亡率は高い割合を示しているが, 手術施行症例における死因のトップは術後の肺炎であった.一方クリッピング術非施行症例の死亡率は, H& K grade IV96%, H& K grade V98%と非常に高く, クリッピング術施行症例と非施行症例の患者背景は異なるものの, 死亡率でみた限りにおいてはクリッピング術施行症例がより良好な転帰を示しているといえるだろう.重症クモ膜下出血症例に対し3D-CT angiography(3D-CTA)など画像技術の発達に伴い, 迅速かつ的確な診断が行え, さらには軽度低体温麻酔(32〜33℃)を行うことでより安全な直達手術が可能となった.このような重症クモ膜下出血症例に対し, 医師がはじめから患者の予後を決めつけ, 手術をあきらめるのではなく, 手術適応を明確にすることが重要である.長い時間の低酸素血症や低血圧による脳の全般的低灌流状態, すなわちtotal cerebral ischemiaをきたしておらず, 自発呼吸が存在する患者(完成した脳ヘルニアにはなっていない)に対しては直達手術の適応がある.術中は患者の全身状態の的確な管理をすべきであり, また術後においても特に水分管理や早期離床を心がけ, ウロキナーゼによる脳槽灌流にて脳血管攣縮を積極的に予防することでさらによい手術成績を得られるはずである.このような症例に対し熟練した脳外科医がless invasiveに手術を行えば, 症例の多くは一命をとりとめられると考えられる.また, 「高年齢」は適応除外項目にする必要はない.
- 2002-03-20
著者
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