東亜産カヤツリグサ科の分類學的研究4
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概要
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9.東亜のヒメクグ亜屬 カヤツリグサ屬はカヤツリグサ類(狭義のカヤツリグサ屬)・アゼガヤツリ類・ミヅガヤツリ類・イヌクグ類・ヒメクグ類・ムツヲレガヤツリ類の6群に分けることが出来るが,私は研究の結果之等の6群をそれぞれ独立の屬と考へる事には賛成出来ない.今迄,邦産のホタル〓亜科(カヤツリグサ族・ホタル〓族等)を研究せられた唯一人の専門家大井博士は先生の大著に於て6群中ヒメクグ類のみを屬の階級に残された.しかし,私は最近外國のヒメクグ類を見る機会を得て,上記6群中の任意の一つを屬以下に扱ふならばその他の5群も同様屬以下に及ばなければバランスがとれないであらふと思ふのである.ヒメクグ類をカヤツリグサ屬(廣義)の亜屬とした場合用ひられるべき學名は欧文の項に示した通りである.更に東亜のヒメクグ亜屬を3節に分つべき事は先に提案した通りであるが,之は従来のカヤツリグサ科の分類には余りにも小穂部の特徴に重點がおかれ過ぎて居た嫌があるので,之を少しでも是正し度いと考へたのにほかならない.10.サツマスゲ節のスゲ類 最近,國内外より興味ある若干の資料を入手したので,それ等に基づいてこの節をまとめた.本節は従来ヒカゲスゲ節とビロードスゲ節に入れられて居たスゲの各小数を合せ,主に葉の特徴から自然群と考へてキュー植物園のネルムス氏が1951年に設立した小群で葉と稈にシンジュガヤの習性がある.果胞一本槍のスゲの分類に一つの光明を与えた例として注目さるべにものであらふ.未だこの節がおかれるべき位置に就ては定説を見ないが,幸にして,日本にはこの節関係の生品及び模品が全部あるのでいづれ明らかになると思はれる.私としては,この節はマレー區系區で所謂Indocarexから生じた古い起源の一群で,丁度Indocarexから沸印のCarex euprepesを中間として生じたものであらうと思ふ.この事については本年の植物學会東京支部大会で報告した通りである.本稿をまとめるに当り資料閲覧の便を計られた京大の北村・田川両先生に深く謝意を表する.
- 日本植物分類学会の論文
- 1955-10-30
著者
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