カヤツリグサ科の分類学的研究 11
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
台湾のハナビスゲは今迄印度の C. filicina に同定されてゐたのであるが,果嚢に明らかに毛のある点で正しくはマレーシアの C. Rafflesiana とすべきものである。嘴の切込みも C. filicana より浅い。しかしハナビスゲ自体はマレーシアの C. Rafflesiana 其の物とは多少の形態的なずれがあって,分布上北に寄った一変種と考へられ,その学名を C. Rafflesiana var. pseudo-filicina と定める。29. 本文第29図に示した様に分布域がオーストラリヤと日本周辺とに両分された著しい不連続分布を示すスゲ・アハボスゲ・コウボフシバの3種がある。これ等の3種に就いて言へる事は,南半球と北半球との個体の間に殆ど形態的な分化が見られないと言ふ事であって,分化のかなり進んでいるヒマラヤ日本型のスゲ(小山:植物学雑誌72巻312-322)と対照的である。この両分された分布の成因については所謂南極起源説を取り上げると興味が深い。即ちこれは南からマレーシア経由で北に分布したが,現在ではマレーシアの分布圏が消失したと考へられる。その論拠としてもアハボスゲがニューギニヤにある事は興味深く,又斯様な分布の前段階が所謂マレーシア日本型の分布と見ると,後者に属する植物がインドに分布してゐない点もも了解出来ると思ふ。
- 日本植物分類学会の論文
- 1959-07-31
著者
関連論文
- 東亜産カヤツリグサ科の分類學的研究 3
- 120 水陸両環境に生育するハリイ属(カヤツリグサ科)C_4植物の形態と光合成関連特性
- ヒンジガヤツリ属の形態と分類
- 日本のウキヤガラ属
- 大井次三郎先生の面影を偲ぶ
- カヤツリグサ科の分類学的研究 11
- カヤツリグサ科の分類學的研究 8
- アフガニスタンのカヤツリグサ科
- 京都大學カラコラム・ヒンズークシ探險隊(1955)採集のカラコラム産のスゲ科の新種
- クロボスゲはCarex atrataではない
- ヒメザゼンソウの斑葉品
- 青森縣下北半島に新分布2件
- クマガイサウの一品
- 東亜産カヤツリグサ科の分類學的研究4
- 中尾氏採集のヒマラヤ産スゲ屬の新種