九州におけるシロヨメナ群の形態的, 細胞学的研究
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概要
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シロヨメナ群Aster leiophyllus complexは複雑な倍数体複合体で, 分類の困難なグループである。従来, 九州にはこの群のうちシロヨメナとイナカギクの2種が分布するとされていたが, 両者の中間的な形態で, どちらともいえない個体がしばしば出現している。これまでの地方植物誌や図鑑などでは, そのような個体はシロヨメナかイナカギクのどちらかにあてはめられていたようである。本研究では, 九州全域にわたる採集品に基づいて, 形態変異の解析, および染色体数の観察を行い, 九州のシロヨメナ群に関する分類学的な再検討を試みた。その結果, 九州には2倍体と6倍体のシロヨメナAster leiophyllus var.leiophyllus, 2倍体のイナカギクAster semiamplexicaulisのほか, 両者の中間的な形質をもつが区別可能な二つの分類群が認められた。これら二つの分類群を新分類群と認め, ここに記載した。ケシロヨメナAster leiophyllus Fr.et Sav.Var.intermedius SoejimaはシロヨメナAster leiophyllus var.leiophyllusによくにているが, 葉の裏の毛の量がシロヨメナよりも多いこと, また短い毛しかもたないシロヨメナに対して長い毛が混じることで区別される。九州の東北部の他, 中国地方, 四国に分布し, 4倍体のみがみつかっている。サツマシロギクAster satsumensis Soejimaはケシロヨメナよりもさらに毛の量が多く, 長毛もめだつが, イナカギクよりは毛の量が少ない。九州の南部に普通で, 2倍体のみがみつかっている。他のシロヨメナ群の2倍体の核型では, 付随染色体が2本しかないが, サツマシロギクでは通常, 付随体がある染色体を3または4本もつ。九州のシロヨメナ群の検索表[table]
- 日本植物分類学会の論文
- 1993-08-30
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