ナガバマムシグサ群(サトイモ科)の分類形質の検討 : 西日本における5分類群, 10集団のデータ解析
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概要
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ナガバマムシグサ群内の5分類群に属する,西日本の10集団及び関東地方の1集団,併せて356個体について,雌雄株に分けて小葉数,花梗,葉柄及び偽茎の長さを計測し,また8集団の45個体について子房あたりの胚珠数を算定し,次のことを明らかにした。1)タカハシテンナンショウの雌個体を除き,小葉数と葉柄に対する花梗の長さの比はこの研究で採用した分類群のまとまりと最もよく対応しており,分類群内では有意な差がなく,分類群間で有意な差を示した。2)1子房あたりの胚珠数は調べたどの集団においても11.2以上であり,ナガバマムシグサ群が10.5以上の胚珠数で特徴づけられるとする邑田(1986)の結論を支持するものであった。3)タカハシテンナンショウは性転換に際して葉柄に対する花梗の長さの比が特に著しく増大する。また,子房あたりの胚珠数を除き,調査した形質や染色体数でナガバマムシグサ群の他の分類群とは明確に異なる。4)タカハシテンナンショウ以外の4分類群は仏炎苞の口部が耳状に張り出すかどうかで容易に2群に分けられる。一方は口部が耳状に張り出すミミガタテンナンショウ(オキノシマテンナンショウを含む)であり,もう一方は,ハリママムシグサとヨシナガマムシグサを含む。本研究によりハリママムシグサとヨシナガマムシグサの間では小葉数や葉柄に対する花梗の長さの比の変異域がほとんど重ならないことが示された。従ってハリママムシグサは明確に識別できる分類群である。一方,ヨシナガマムシグサは,東日本のナガバマムシグサ,ハウチワテンナンショウ,ヒガンマムシグサと似ており,今後,これら東日本の集団の形態変異について詳細に検討する必要がある。
- 日本植物分類学会の論文
- 2000-09-12
著者
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