山岳・森林地域における大気汚染物質の乾性沈着(山岳地域における大気汚染・酸性雨-気象、大気化学、酸性雨分野から見た実態-)

概要

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本稿では、山岳域の森林のO_3、NO_2および硫酸エアロゾル(SO_4^<2->)などの乾性沈着について、平地の森林や作物群落における乾性沈着と比較しつつ、紹介したい。なお、当研究室と他研究機関との共同研究による観測結果によると、森林では沈着だけでなく放出の場合もあり、これについても報告したい。湿性沈着量については世界各地ですでに多くのデータの蓄積がなされている。しかし、乾性沈着過程やその量については、その観測が困難であるため、データの蓄積は限られている。とりわけ山岳域での森林における乾性沈着の観測は困難であることから、観測データがほとんどないのが現状である。したがって、大気汚染物質の循環過程や酸性雨問題のうちで、よく分っていないものの一つである。大気汚染物質が森林や植物に影響を及ぼす経路は主に2つがある。その一つは大気汚染物質が植物に乾性沈着過程で葉の表面や気孔を通して植物体内に入り込み、これがひどい場合には植物組織を破壊し、枯死や葉面障害を引き起こす。ひどくない場合でも種々の生理的な影響を通じて生長に悪影響を及ぼす。これら植物影響の程度は第一に体内に汚染物質が入り込んだ量によることが知られている。従って、乾性沈着量が植物への影響程度を決定する大きな要因になる。他の一つは、土壌の酸性化を通して間接的に植物に影響を及ぼす場合である。ガス状あるいはエアロゾルの酸性物質が葉などの植物体に沈着・吸収されると一時的にそこで貯留されるが、最終的には溶脱や落ち葉等として土壌に入り、それが土壌の酸性化に寄与することになる。この土壌酸性化へ影響の程度は、乾性沈着量に依存するので、乾性沈着量を評価することが重要である。
社団法人大気環境学会の論文
2002-09-11

山岳・森林地域における大気汚染物質の乾性沈着(山岳地域における大気汚染・酸性雨-気象、大気化学、酸性雨分野から見た実態-)

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