複数のストレスによる蛋白質の会合に及ぼす安定化剤の作用
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概要
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現在注目を集めている抗体を含めて蛋白質製剤の発展には目を見張るものがある.蛋白質を薬品として開発するための最大の難関はその不安定性にある.蛋白質の溶液中の安定性は極めて低く,そのため製造過程や貯蔵中で会合や変性を起こす.しかし安定性が低いとはいえ,その使い易さから溶液貯蔵の方が凍結乾燥よりも好まれる.凍結乾燥するにしても,蛋白質の不安定さが障害となる.蛋白質を製剤化するためにまず溶液としての開発を試みるのが通常である.蛋白質は貯蔵中に様々なストレスを受ける.化学的なものとしてはpHの変化,酸素などの溶存ガス,溶液中あるいは薬の容器から出てくる金属イオンなどの不純物が挙げられる.物理的なものとしては光,温度の上昇,輸送中のゆれや魔神,ゆれと深く関わっている容器表面や空気界面との接触,偶発的な凍結融解,ろ過などが挙げられる.これらの要素はすべて蛋白質の化学的安定性にも影響するが,光を除いては蛋白質の構造安定性にも影響を与える.蛋白質薬品は貯蔵中これらのほとんどのストレスを多かれ少なかれこうむる.問題は1つの方法であるストレスから蛋白質を守ることができても,他のストレスに対して無力な場合があることである.ここでは構造安定性が極めて弱いCNTF(ciliary neurotrophic factor)とKGF(keratinocyte growth factor)を例に用いて蛋白質の安定化法について述べる.特にCNTFは攪拌,ろ過,凍結融解,温度上昇,各種容器表面や空気界面との接触などあらゆるストレスに対する安定性が弱いので,モデル蛋白質として最適である.このようなストレスから蛋白質を保護するために安定化剤が用いられる.ここでは複数のストレスによるCNTFの会合を最小限に抑えるための安定化剤の使用について述べる.
- 2003-11-01
著者
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荒川 力
Alliance Protein Laboratories
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荒川 力
アライアンス・プロテイン・ラボラトリーズ
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荒川 力
アライアンス プロテイン ラボラトリーズ
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荒川 力
アライアンスプロテインラボラトリーズ
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DIX Daniel
リジェネロンファーマシューティカルズ
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CHANG Byeong
インテグリティーバイオソリューション
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荒川 力
アライアンス プロテイン ラボラトリイーズ
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