分子動力学法の考え方(<特集II>分子動力学(MD)を応用して何ができるか)
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概要
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私たちの周りにある物質の密度は,物質界において知られている相互作用(重力,弱い力,電磁力,強い力)のうち電磁力(クーロン力)によって支配されていることを反映して,大まかに見ればρ[〜!=]10^3kg・m^<-3>程度に凝集している.そして,そうした通常のエネルギー・レベルにある原子と電子から成る物質系の状態は,原子核と電子の運動エネルギーと核-核,電子-電子,および核-電子間のクーロン相互作用に由来するポテンシャルエネルギーの和をハミルトニアンとするSchrodinger方程式によって正確に記述され,原理的にはその解である波動関数から系のすべての特性を評価することができる.こうした相互作用し合う極めて多数の粒子集団の特性評価は,これまで専ら統計力学のテリトリーの問題であった.久保によれば,統計力学の課題はつぎの二つであるという.1)巨視的物理学において,経験的に定めるべきものとされた巨視的対象の特徴を,微視的法則をもとにして,その構造から導き出すこと.2)一般に,巨視的物理法則そのものを,微視的法則から導き出すこと.縮めて言えば,統計力学のそもそものねらいは,力学理論の枠組み内で物質界に生起するすべての事象を解明することにあると言えよう."分子動力学法"(Molecular Dynamics Method,以後MD法と略称する)は,飛躍的なコンピュータとその利用技術の発展を背景に現れた,目的を同じくする強力な研究手段である.MD法では,微視的構造のダイナミックスを直接的なシミュレーションによりコンピュータ上に引き出し,その詳細に検討を加えることにより,物質系の特性を評価しようとする.適用範囲がコンピュータの能力の制限を強く受け,また得られた結果の実証方法が必ずしも確立されていないなどまだまだ未熟で荒削りな側面を残しているが,統計力学が苦手とする非平衡・非均質系の解明にチャレンジする可能性も秘めており,大いに発展が期待される.
- 社団法人溶接学会の論文
- 2003-09-05
著者
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