創薬への期待と薬剤合成に伴う問題点(<特集>クリニカルPET時代の幕開け : 放射線技師が担う役割)
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概要
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核医学は、放射性医薬品の生体内での挙動を追跡することによって、生体内で起こっている生理、生化学、薬理学反応の変化を捉え、それを指標として病態を把握、診断しようとするところに特徴を待つ。特に、CT、MRI、超音波などの他のイメージングモダリティでは難しい、遺伝子を含めた分子のレベルで、病態での変化を把握することが可能であり、この特徴を生かした診断法の開発は、核医学診断の内実を高め、アイデンティティーを確立する上で重要と考えられる。一方、昨年4月の<18>^FDGを用いた診断の保健適応が契機となって、従来限られた施設で主に研究用として検討されてきたPET診断を、日常の臨床現場に用いようとするクリニカルPETの普及が急速に進められようとしている。このような背景のもと、今後のクリニカルPETの発展のためには、放射性医薬品の分野では、分子イメージングを可能とするクリニカルPETに適用可能な新しい放射性医薬品の創製、日常臨床に適した効率的な自動合成法の開発、放射性医薬品の製造管理体制・品質管理体制の整備などが重要なポイントとなるであろう。<18>^FDGこ続く、新しいクリニカルPET用放射性医薬品の創製はクリニカルPET推進のひとつのキーとなるものであることから、多方面から種々の検討がなされている。例えば、<18>^FDGが主として悪性度の診断に有効であると言われていることから、増殖度、蛋白合成などを標的とした腫瘍診断用放射性医薬品の開発が注目され、<18>^F-フルオロチミジン、<11>^C-メチオニンなどが期待されている。種々の受容体、酵素に結合する放射性医薬品も、脳神経系や腫瘍の診断、治療の評価などの観点から注目されている。さらに、遺伝子の変化は病気の早期診断や疾患発現リスクの評価に有効であると考えられることから、最近の遺伝子治療の発展とも関連して、遺伝子を標的とした、遺伝子核医学診断用放射性医薬品の開発も展開されつつある。また、腫瘍や虚血性疾患の治療方針の決定や治療評価に有効な情報を得られる可能性がある低酸素領域の診断に有効な化合物の開発も注目される。一方、簡便で効率的な合成を可能とする自動合成に適した合成方法およびそれを組み込んだ自動合成装置の開発も、日常的な臨床診断を遂行させるには重要な点である。そのため、カラムに固定化した反応試薬を用いるオンカラム合成法、合成に必要な試薬や容器などのすべてを1枚のプレートに装着したディスポーザブルなカセットタイプの合成装置などの開発が進められている。また、これらのクリニカルPET用放射性医薬品は、核種の製造から最終製品の調製まで、すべての工程を臨床現場に密接して行うことから、作業環境、製造および製品の品質に開する管理体制を整備し、製品の品質確保および作業者の安全に努めることが必要である。この部分は、コストなどの問題もあり、従来後回しとなってきたところであるが、PET核医学がこれまでの研究段階から真に日常的な臨床診断法のひとつとして発展していくためには不可欠なものである。現在、市販の放射性医薬品の製造及び品質管理の基本となっているGMP(医薬品の製造管理および品質管理に関する基準)の考えを基に、クリニカルPET用放射性医薬品の製造管理体制・品質管理体制についてのガイドラインが核医学会及び日本アイソトープ協会から提示されているので、これを基本にして、施設に適した基準と管理体制を整備することが求められる。これらの課題を解決していくことによって、クリニカルPETが推進され、核医学の更なるジャンプアップにつながることが期待される。
- 2003-04-01
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