針葉樹に入るキバチ類とその寄生蜂
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概要
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1971年から1973年の間に, 日本全国32地点から, 9樹種について, 668本の針葉樹丸太を採取し, その中から出現してくるキバチと, その寄生蜂の種類と数を記録した.アカマツとクロマツでは, ニトベキバチが優占し, その寄生蜂としては, Megarhyssa praecellensとIbalia leucospoidesの2種が多かった.スギ・ヒノキでは, オナガキバチとニホンキバチが多く, 主な寄生蜂は, Rhyssa persuasoriaとMegarhyssa praecellensであった.モミでは, オナガキバチとコルリキバチが多く, Rhyssa jozanaとIbalia leucospoidesが, 主要な寄生蜂であった.北海道のトドマツ・エゾマツでは, オナガキバチ・ヒゲジロキバチ・コルリキバチの3種が混在し, その寄生蜂は, Rhyssa persuasoria, R. jozanaとIbalia leucospoidesであった.ヒメバチ科のPseudorhyssa sternataは, 上記のヒメバチ科の, 第1次寄生蜂が作った産卵孔に, あとから産卵管をさしこみ, その幼虫は, 1次寄生蜂の幼虫を殺して, 寄主のキバチ幼虫をうばう, という特殊な副次的寄生蜂であるが, このP. sternataが, スギ・ヒノキに, 比較的多かった.ニトベキバチとコルリキバチの♀は, 産卵をするさいに, 樹皮上から, 1ないし3方向へ, 産卵管を刺す習性があるために, 剥皮した丸太の材部表面には, 0.5mm間隔ぐらいで, 1つないし3つの産卵孔ができる.ときには, 4孔もあけられることがある.1個所あたりのニトベキバチの産卵孔数は, 平均2.2孔であった.ほかのキバチでは, 1個所に1孔で, オナガキバチの産卵孔は, 比較的細く, 少しカーブするものが多かった.アカマツに穿入したニトベキバチの幼虫の坑道をたどってみると, はじめ1cm程は, 材表面と平行な方向へ進み, その後, 材内部へ穿孔した.完通された坑道の長さは, 7cm∿10cmで, 坑道の一番深いところは, 材表面から, 2cm∿4cmの深さであった.それ以上に, 材内部へ深く穿孔した幼虫は, 全部途中で, 死亡していた.ニトベキバチが, 卵から成虫になるまでの生存率は, 香川県産のアカマツ丸太内で調べたところ, 30%であった.キバチ以外に, 比較的大形の穿孔性甲虫類が, 沢山採れたので, それらの種類と成虫羽化数をつけ加えた.
- 日本昆虫学会の論文
- 1978-09-25
著者
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