名古屋市周辺で普通種となったツマグロヒョウモンの生態
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概要
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名古屋市周辺に定着したツマグロヒョウモンの生態を1999∿2000年に調査し, 次の結果を得た.1. ライントランセクトによるチョウの数の種別調査では, 名古屋市西部梅森荘と日進市香久山付近での本種の成虫観察数は, 第1世代羽化前を除き, 多いほうから3位以内にあった.2. 夏眠も冬眠もせず, 冬季も発育を続け, 1年に4∿5世代を繰りかえしていた.3. 未成熟期の発育限界温度は約10℃, 有効積算温度は約480日度だった.4. 成虫個体数は7月に一旦ピークとなり, 8月に減少し, 10月に再び増加する傾向があった.調査地域内の個体数最大値は1999年が80匹, 2000年40匹と推定された.オス成虫の生存率は1日約95%と推定された.5. 発見成虫の性比はオスが80%を占めたが, 羽化時の性比は50%と有意差がなく, 違いの原因は, モデル種がいない条件下での鳥によるメスの捕食であると考えられた.6. 寄主植物はコンクリート道路際や街路樹下に生えている野生のスミレであるが, スミレの葉がほとんどない冬と春には庭に栽培されているパンジー・ビオラを食べていた.幼虫の最大発見数は120匹で, 観察できた寄主の率と発見確率を考慮すると調査地にいる幼虫数は最大約1000匹と思われた.7. 幼虫の死亡要因にはコマユバチの寄生とアシナガバチとアリによる捕食もあるが, 最大の死亡要因は除草および食いつくしによりスミレの株・葉が無くなることだと考えられた.
- 2001-09-25
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