震害状況から推定される断層変位運動
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概要
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1995年1月17日5時46分に発生した兵庫県南部地震により神戸・西宮間をはじめとする震源域では、木造家屋のみならず、鉄骨コンクリート建築物や鉄筋コンクリート土木構造物に通常の力では起こりえないような震害が発生した。これら構造物等の破壊状況を見ると、この激甚災害はいわゆる直下型地震によるもので、「伏在活断層」の右横ずれ運動に起因すると考えざるをえない。2月7日気象庁の発表による「震度7」領域は、神戸・西宮間では幅1〜3km、延長約25kmの、細長い「帯状」に分布している。また不可解なことに、地震に弱いとされる沖積低地や埋立地からなる震度7領域の南側の構造物が受けた震害は、主として緩扇状地からなる北側と比較して軽微である。すなわち、今回の震害の原因を解明するためには、まず次の2つの問題設定に対し、両者を同時に合理的に説明することがその第1歩である。問題A震度7領域が「細長い帯状」に分布するのは何故か問題Bその南側(海側)の構造物被害が比較的小さいのは何故か本報告は各種機関の調査速報(主として新聞記事による)および2月12日、2月24〜25日の2回の筆者の現地踏査から、今回の地震の発震機構および上記2点の理由について、現時点の筆者の結論を述べるものである。この検討に当っては、下記の3つの常識的な原理と手法および今回提案する(4)の「地震断層運動」を用いた。(1)過去の地震断層のごく近傍で記録された地震波の変位波形を見ると、ほとんど「第1波」の変位しか記録されていない。⇒水平変位成分を持つ地震断層の移動地塊の運動は、地震直前までOであった水平方向加速度が瞬時に数百gに達したもので、構造物等の地上部は基礎等の地中部に比較して、慣性の法則により変位発生が遅れた(だるま落とし・むち打ち症)。(2)菊池による震源解析(2月27日朝目新聞報道記事)によると、今回の地震では6秒間に3回の震源活動があり、その第3番目の地震断層が神戸から西宮に向かって(住吉川付近まで)引かれている。⇒「伏在活断層」の直下型右ずれ地震断層の発生を思わせる。(3)余震分布は本震断層と一致することが多いため、今回の余震分布から本震を仮定し、その地震断層面と地表面との交線を求め、その交線と地表に現れた地震断層(または地震断層が直下に伏在していることを示す地表の変状等)と対比する。⇒「地質図学」の適用(4)横ずれ地震断層の変位運動はその片側だけで発生し、その反対側の変位はほとんどないか、あるとすれば通常図示される相対運動の逆方向に変位する。これはトランスフォーム断層以外の断層(逆断層も黙り)に成り立つ。⇒「断層変位(運動に伴うひずみ限界にあった地塊のリバウンド)運動」の仮説以下、今回の発震機構および地震断層運動と震害の関係について、上記項目の順に実現象を解釈・推理し、2つの問題点を明らかにする。
- 1995-06-10
著者
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