オーディトリウムにおけるバルコニー下部空間の初期反射音特性と聴感印象

概要

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本研究の目的は、オーディトリウムの重要な空間構成要素であるバルコニー焦点をあて、その形態と下部空間の音響特性の関連を明らかにし音響計画上の指針を得ることにある。バルコニーの設置がもたらす反射音の物理的変化は、第一に主空間の天井方向から到来する初期反射音のレベルや遅れ時間の変化であるとの仮説に基づいて、本稿ではバルコニー下部における初期反射音の方向特性とその聴覚的効果について検討した。まず、実音場における測定結果から、バルコニー下では、初期反射音の全エネルギに対する鉛直成分の比が著しく低下することを示した。次に、模擬音場を用いた音響心理実験により、側方反射音エネルギの割合を一定にした条件下で上方反射音を付加していくと、水平面内の反射音だけの場合に比べて「音に包まれた感じ」が強くなることを示した。これらの結果から、バルコニー下では、適度な時間遅れで到来する上方からの反射音がバルコニーによって遮られ、反射音の到来方向の空間的なバランスが崩れることが、音響的に好ましくないといわれている要因の一つであることが示唆された。
社団法人電子情報通信学会の論文
1994-12-20