酵素組職化学における鉛法 : 理論と応用
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概要
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酵素組織化学において, 鉛は反応産物の捕捉剤(capture reagent)として広く利用され, とくに電顕レベルの研究ではその発展の歴史とともに歩んで来たといっても過言ではない。燐酸イオン+鉛イオン→燐酸鉛↓という極めて単純な化学理論によって数多くの酵素が光顕および電顕レベルでの研究対象となり, 夥しい論文が生み出された。すなわち, 酸性ホスファターゼ, いわゆるATP-aseその他のホスファターゼ以外にもadenylate-およびguanylate cyclasesなども対象になって来た。また燐酸以外の反応産物の捕捉剤としても利用された。(sulfatase, esterase, GOT...)。しかし, この操作の簡便さと, 反応像の鮮鋭ゆえ(とくに電顕レベルで)の安易な取り組みの結果, 重大な陥井にはまる危険も大きい。このことは本学会においても「反応の特異性」というテーマでしばしば論議されて来たところでもあるが, この技法についてのブームが漸く去り, 鎮静化した現在, 改めてこれを検討し直すのも有意義なことと思う。かって演者が発表したornithine carbamoyltransferase (OCT)の組織化学は鉛に関する諸問題を集約的に含んでいるので, 主としてこれを例に考察を加えることにする。本酵素ではホスファターゼの如く加水分解作用によって燐酸を遊離するものではなく, カルバミル燐酸とオルニチンの間におけるアミノ基のtransferationの過程で生ずる燐酸が対象となるものである。このOCTについて, 組織の固定, 反応液, 反応結果の特異性およびこれに関連した他種酵素, 鉛の組織への吸着性などについて述べる。さらに, 2〜3の応用例および今後への展望について触れる。
- 日本組織細胞化学会の論文
- 1978-11-01
著者
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