泌尿器科的悪性腫瘍患者における血清IV型コラーゲン濃度の臨床的検討 : 血清ラミニン濃度との比較を中心に

概要

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近年,悪性腫瘍の浸潤,転移の過程において,種々の細胞外基質が,重要な役割を果たすことが明らかになってきた.われわれも,既に尿路悪性腫瘍患者における血清ラミニン濃度が高いことを報告し,血清ラミニン濃度が,悪性腫瘍の転移あるいは臨床経過の指標として利用しうる可能性を示した.今回は,ラミニンと同様に基底膜を構成する細胞外基質であるIV型コラーゲンの,N末端に相当する7S-domainの血清中における濃度を測定し,血清ラミニン濃度と比較して,その臨床的意義を検討した.血清ラミニン濃度が,腎細胞癌,前立腺癌および転移巣を有する膀胱癌患者において,各々1.66±0.57U/ml,1.60±0.28U/ml,1.94±0.38U/mlと高値を示したのに対し(正常コントロール群11.35±0.19U/ml),血清IV型コラーゲン7S-domain濃度は,各々,5.19±3.48ng/ml,3.84±1.63ng/ml,4.39±1.03ng/ml(正常コントロール群:4.21±0.76ng/ml)と有意の上昇が認められなかった.各々の腫瘍で,転移巣を有する群においても統計学的に有意な高値は見出せなかった.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1993-03-20