陰茎体部に発生した汗孔癌の1例

概要

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83歳男性,手拳大,カリラワー状の陰茎体部腫瘤を主訴に当科を受診した。亀頭部,冠状溝には異常を認めず,CT検査では両側鼠径部,骨盤内から傍大動脈節に至る広範囲のリンパ節腫大を認めた。腫瘍からの動脈性出血を繰返した為,全除精術と両側の腸骨鼠径部リンパ節郭清術を施行した。腫瘍は髄様で胞体の乏しい均一な細胞集団より構成され,角化傾向や棚状配列は見られず,一部では腺管様構造も観察された。免疫組織染色ではCEA(+),S-100(-)であり,皮膚付属器であるエクリン汗器官由来の汗孔癌と診断された。術後残存する傍大動脈リンパ節転移に対してメソトレキセート,シスプラチン,ブレオマイシン,アドリアマイシンの4剤による化学療法を1クール施行し,-94%の腫瘍縮小効果が得られた。4ヵ月後,MRSA肺炎による呼吸不全の為死亡した。陰茎体部に発生した汗孔癌はまれで,転移を有する症例に対する治療法は未だに定まっていない。本症例は高齢者であるため,1クールしか化学療法が施行できなかったが著明な腫瘍縮小効果が得られ転移を有する汗孔癌に対する治療法として有用である可能性が示唆された。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1997-05-20