腎癌のSatellite tumor lesionsと核小体形成部位の研究 : 腎実質温存手術の是非をめぐって

概要

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(目的)腎細胞癌に合併するサテライト病巣の存在様式とその増殖能の検討を行うことにより,腎実質温存手術の是非を検討することである。(方法)摘出した58腎の全割面標本を作製し,main tumorから離れた腎実質内に存在する腫瘍細胞の集塊(satellite tumor lesions:STL),および細胞異型は軽度であるが明らかな構造異型を示す2つの病変(adenomas:AD,dysplastic foci:DF)につきそれらの組織学的な存在様式,および各病変を構成する細胞のAgNORsによって示される増殖能を検討した。(結果)58例中27例(46.6%)にSTLを,19例(32.8%)にADまたはDFを,すなわち37例(63.8%)にSTL,AD,DFのいずれかを認めた。STLの出現頻度はmain tumorの大きさとの間には相関を認めなかったが,high grade,high stage症例にて高い傾向が認められた。またSTLは,その22.2%がmain tumorから2cm以上離れて存在した。一方,AgNORs数はmain tumor5.09±1.53,STL4.24±1.36,ADおよびDF2.27±0.07であった。すなわちSTLの増殖能はmain tumorより低いものの,正常近位尿細管細胞のそれとほぼ同等の増殖能を示したADおよびDFより有意に高いと考えられた。また,STLおよびAD,DFの有無により,main tumorの平均AgNORs数には有意な差を認めなかったことから,これらの合併はmain tumorの増殖能には左右されず,腎癌のmulticentricityによるものと考えられた。さらにSTLの平均AgNORs数は,main tumorからの距離との間には有意な相関を認めなかった。(結論)以上より,本研究はSTLの生物学的態度を解明するには不十分であるが,STLは少なくとも増殖能の亢進した細胞より成り,従来主張されている腎実質温存手術では取り残す危険性のある病変であることは確かである。今後,根治性を犠牲にすることなく腎実質温存手術を行うには,特にelective caseにおいて施行する際には,この病変が術後の局所再発に,いかに関わっているのかについて明らかにすることが不可欠であると考えられた。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1996-09-20

腎癌のSatellite tumor lesionsと核小体形成部位の研究 : 腎実質温存手術の是非をめぐって

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