腎癌細胞の産生するリンパ球遊走因子についての検討

概要

論文の詳細を見る
目的:腎細胞癌組織ではリンパ球の集籏という現象がしばしば観察される.リンパ球集籏の第一ステップとして,リンパ球の癌細胞への走化性が必要と考えられているが,どのようなサイトカインが影響を与えているか,今まで詳しく検討されていない.今回,我々は,腎癌細胞の産生するリンパ球遊走因子(ケモカイン)についてin vitroでの検討を行った.方法,結果:52歳男性の腎細胞癌原発巣より新たに,腎癌細胞株TC-2を樹立した.原発巣組織には著明なリンパ球浸潤が観察された.培養細胞は2年65代にわたり順調な発育を示している.フローサイトメーターを用いたDNA分析ではaneuploid patternを呈し,染色体分析では,72にモードを有するヒト型染色体で4q+,5q-などの特徴的な変化がみられた.In vitroにおけるリンパ球遊走試験では,TC-2細胞培養上清にはコントロールに比べ,約2.9倍のリンパ球遊走活性が認められた.この活性は抗インターロイキン8(IL-8)抗体により約60%中和された.またTC-2細胞培養上清中にはELISAにより3.5ng/mlのIL-8が確認された.結論:以上の結果より,TC-2細胞より産生されるリンパ球遊走因子はIL-8が関与している可能性が示唆された.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1994-11-20