逆流性腎症の研究 : 尿細管および糸球体障害よりみた逆流性腎症

概要

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原発性膀胱尿管逆流症(VUR)204例を対象に、尿細管障害の指標として尿β_2-microglobuin(β_2-MG)、α_1-microglobulin(α_1-MG)、N-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)、糸球体障害の指標として尿微量albuminを測定し、術前術後の変化およびDMSA腎シンチグラフィー所見よりみた腎障害の程度と各指標との関係について検討を行った.初診時〔VUR(十)〕の尿β_2-MG、α_1-MG、NAG、albumin値は、それぞれ36%、40%、50%、34%の症例に高値を認めた.術前高値の例では、殆とが術後VURの消失により各指標の改善をみた.この結果より、逆流そのものにより尿細管障害および糸球体障害が生じており、逆流の消失により改善される事が示唆された.術後または逆流自然消失後2年以上経過した後〔VUR(一)〕の尿β_2-MG、α_1-MG、NAG、albumin値をみると、それぞれ16%、40%、27%、32%の症例に高値を認めた.この中には術後改善はしたものの正常値に復さない例や、VUR消失後経過観察中に高値を示すようにたった例も含まれる.このような症例は一側腎または両側腎に高度の障害を伴う例が多かった.この事より、nephron massの減少に伴う残存nephronへのoverloadが、逆流消失後も尿の各指標で高値を示す一因と考えられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1993-02-20