経尿道的前立腺切除術における抗菌薬予防投与の意義

概要

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手術前に尿路感染症を有しない経尿道的前立腺切除術の抗菌薬予防投与の意義について検討した。対象は,prospectiveに検討した無投与群35例と一日投与群70例,及びretrospectiveに検討した長期投与群47例との3群計152例である。手術後38℃以上の発熱は無投与群4例(11.4%),一日投与群10例(14.3%),長期投与群では4例 (8.5%)に認められた。10^4CFU/ml以上の細菌尿は,無投与群では手術後1〜4日目に約10%に出現したが,一日投与群では認めなかった。手術後90日目まででは無投与群35例中22例(62.9%),一日投与群70例中32例(45.7%)に細菌尿が出現したが,統計学的有意差を認めなかった。出現菌の菌種内訳は両群ともグラム陽性球菌が約7割を占めた。細菌尿に対して経過観察を試みたが,抗菌薬使用の有無にかかわらず,細菌尿は20日前後で消失し,それに要する日数に差は認められなかった。また,3群の膿尿消失に要する日数は統計学的に差を認めなかった。以上より,手術前に尿路感染症を有したければ経尿道的前立腺切除術に対する予防的抗菌薬投与は必ずしも必要ではないと考えられた。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1991-09-20