腎細胞癌に対するモノクローナル抗体の作製

概要

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腎細胞癌における細胞表面抗原解析の目的で腎細胞癌培養株を抗原として用い,モノクローナル抗体を作製した.腎細胞癌培養株ACHN(American Type Culture Collection, CRL1611)2×10^7個をBALB/c mouseに免疫し,mouse脾細胞とmouse骨髄腫細胞Sp-2をpolyethylene glycolで融合し,得られたhybridomaをEnzyme Linked Immmunosorbent Assayでscreening後,限界希釈法でcloningを行ない1種のモノクローナル抗体(A25,IgG_1)を得た.抗体screeningの結果では,A25は腎細胞癌培養株とは反応するが,他の人癌培養細胞株など23種とは反応しなかった.次にformalin固定,paraffin包埋切片の免疫組織染色を行なってみたところ,gradeI腎細胞癌は100%(3/3),gradeIIは91%(10/11)染色されたがgradeIIIの腫瘍は染色されなかった(0/3).正常腎組織では近位尿細管のみがA25により染色されたが,糸球体,遠位尿細管などは染色されなかった.他の臓器,組織では胃の幽門腺細胞,大腸癌の外分泌細胞が染色されたが,唾液腺,膵臓などは染色されなかった.以上の結果より,A25は近位尿細管上皮細胞と,腎細胞癌との共通抗原を認識しており,腎細胞癌の細胞異型度が強くなるに連れ,A25の示す近位尿細管と腎細胞癌に共通の抗原性も消失するものと思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1989-06-20