腎癌のレクチンによる糖組織化学的研究
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概要
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52例の腎癌のホルマリン固定パラフィン切片を用い,PAP法を応用したレクチン抗レクチン酵素抗体法により,BPA,LTA,PNA,DBAおよびUEA-1の各レクチンの染色性を正常腎組織と対比して検索した.正常部位では,BPAはほとんどの尿細管に強陽性の染色性を示し,LTAは近位尿細管に,PNAは遠位尿細管・集合管に,DBAは集合管に,UEA-1は髄質集合管および血管内皮に特異的な染色性を示した.癌巣においてはBPAが最も高率に陽性所見を示した.LTA・PNAがこれに次ぎ,DBA・UEA-1が陽性を呈する場合は,極くまれであった.細胞の構築面からみると胞巣型は一般に染色性に乏しかったが,分化度の高い腺管型は最も高い染色率を示し,とくに管腔内面に強い染色性を認めた.嚢胞型の内腔面・乳頭型の細胞先端はこれに次ぐ陽性率を示した.細胞型からみると淡明細胞型は最も高い染色率を示したが,低分化型癌に多くみられる顆粒細胞型は染色率が低く,とくに低分化型の紡錘細胞や肉腫様増殖型を示す細胞はほとんど染色性を示さなかった.組織構築の面からも細胞型の面からも癌の分化度が高い程染色性が高まった.近位尿細管系に特異的なLTAと,遠位尿細管・集合管系に特異的なPNAの染色性に,LTA(+)・PNA(+),LTA(+)・PNA(-),LTA(-)・PNA(+)の3種類の組合わせがみられ,腎癌における末端糖鎖の多様性が認められた.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1986-09-20
著者
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