尿中分離場球菌の各種抗菌薬に対する感受性と年次推移

概要

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(目的)複雑性尿路感染症で高頻度に分離される腸球菌の各種抗菌薬に対する感受性の年次推移を調べ,臨床における問題点を検討した.(方法)1990年から2002年までに尿中より分離された腸球菌8,575株を対象とした.EF寒天培地とADH脱炭酸酵素法を用いて腸球菌を分離,同定した.薬剤感受性テストには8薬剤を使用し,日本化学療法学会推奨微量液体希釈法を用いて行った.判定法はNCCLS(M100-S12)に従い感受性,中間,耐性に分類した.(結果)菌種別の分離頻度はE.faecalis(84.4%),E.faecium(9.9%),E.avium(5.6%)であった.E.faecalisとE.aviumで1999年よりABPCに対する感受性が向上し,PC系薬剤の使用量減少と反比例の関係にあった.IPM/CSの耐性率は菌種別に差を生じ,薬剤使用量との相関も存在しなかった.MINOの耐性率は年次変化を認めなかった.LVFXに対するE.faecalisの耐性率は40%で年次変化はなく,E.faeciumでは90%であったが,耐性率は2001年より75%以下まで改善し,薬剤使用量減少と反比例の関係にあった.(結論)多剤耐性傾向を有する腸球菌の出現はすでに警告を発するレベルにあり,そのような株の広がりや選択を最小限にするためにはより合理的で厳格な抗菌薬の使用が必要であることが明確となった.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
2004-01-20