腎細胞癌における組織,血液,尿中ポリアミンの臨床的意義

概要

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腎細胞癌50例の組織,血液および尿中のポリアミン(diamine,spermidine,spermine)を新しい簡便な酵素法により分別定量し,腫瘍マーカーとしての臨床的意義を検討した.癌患者群では対照群に対し,組織中のspermidine(p<0.01),血中の3分画(p<0,05),尿中のdiamineおよびspermidine(p<0.05)などが,有意に高値を示した.組織,血液および尿中の3分画とも病期が進むにつれて高値を示し,特に組織中のspermidineにおいて顕著であった.組織中のdiamineは組織学的異型度が進むにつれて高値を示した.また,組織中のdiamineは転移性再発の有無との相関を示した.術後の経過観察中に転移性再発を示した9例の血液および尿について検討したところ,血中のspermidineと尿中のdiamineが,転移性再発後に有意に高値を示した(p<0.01).しかし,非再発例では,血液および尿中の3分画は有意な上昇を示さなかった.治療経過および転移性再発の指標として,特に血中のspermidineおよび尿中のdiamineが有用であると思われた.以上より,組織,血液および尿中のポリアミンは,組み合わせて測定することにより腎細胞癌の腫瘍マーカーとして病態を把握するうえで有意義であると思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1992-08-20