尿路***癌を含む多重癌100例の検討

概要

論文の詳細を見る
昭和50年から平成2年までの16年間に治療にあたった尿路***癌970例中100例(10.3%)が臨床的に多重癌であった.これらの症例のそれぞれの癌の発生臓器,発生時期,癌家族歴の有無,喫煙習慣の有無,第1の癌発見からの治療などを調査検討した.癌家族歴,喫煙習慣の有無については,対照として昭和63年から平成2年までに治療にあたった単臓器癌220例,癌の既往歴をもたない前立腺肥大症274例を比較した.尿路***癌では頻度の高い順に前立腺癌50例,膀胱癌43例,腎盂・尿管癌15例,腎癌7例だった.他臓器癌では胃癌,肺癌,大腸癌の順だった.前立腺癌のうち30%は偶発癌であった. 多重癌,単臓器癌,前立腺肥大症の癌家族歴はそれぞれ40.0%,37.7%,33.2%に認め,統計学的有意差は認めなかった.喫煙習慣を有した者はそれぞれ54.0%,38.2%,34.3%であり,多重癌患者では他の2群とくらべ有意に喫煙率が高かった(p<0.01).第1癌の治療が第2癌の発生に関与していることが疑われる症例は2例あり,放射線療法が原因と思われた.化学療法や職業が関係している例はなかった.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1992-11-20