Enterococcus faecalisの尿路における病原性に関する基礎的・臨床的研究
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概要
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尿中分離Enterococcus faecalis(以下E. faecalis)の病原性について臨床的・基礎的検討を行った.東京大学医学部附属病院泌尿器科における1980年7月より1984年6月までの尿路由来E. faecalisの分離頻度の年次推移は8.5%,9.8%,15.2%,15.4%と1982年後半から増加傾向がみられ,対象となった271例中242例(89.3%)は複雑性尿路感染症例であった.本菌の薬剤感受性はpenicillin G(以下PCG)とampicillin(以下ABPC)が良好であった.臨床的に本菌が起炎菌と思われる有症状例は10例(3.7%)にすぎず,重篤な症状を呈したものは認められなかった.ラットを用いた上行性感染実験ではE. faecalis接種後3日から7日目では20腎中5腎に腎盂腎炎が発症したが,炎症は腎盂にとどまり,14日後には腎内生菌数も減少して自然治癒する傾向にあった.しかし,cyclophosphamide(以下CPA)の前処置により全身的免疫能の低下したラットでは発症頻度の増加ならびに感染の重症化がみられた.Proteus mirabilis(以下P. mirabilis)と本菌の複数菌感染実験では24腎中19腎(79.2%)に腎盂腎炎が発症し,両菌とも腎内に多数存在していた.P. mirabilisを目的としたlatamoxef(以下LMOX)による治療実験では,P. mirabilis単独感染時の腎盂腎炎の発症頻度は無治療群の83.3%から治療群では29.2%へ有意に減少していた(p<0,01).しかし,複数菌感染時には治療群でも70.8%に腎盂腎炎が認められ,無治療群との間に有意差がなく,治療効果の低下が認められた.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
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