犬近位尿道に関する薬理学的研究 : 特に排尿時弛緩機構について
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概要
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雑種雌成犬を用い,in vitro studyにより近位尿道機能を薬理学的に検討した.近位尿道は,周方向および軸方向筋切片ともに交感神経刺激剤に対してα_1受容体を介する収縮反応と,β受容体を介する弛緩反応を示した.acetylcholine刺激に対しては,軸方向筋切片ではムスカリン性受容体を介する収縮反応を示したが,周方向筋切片ではacetylcholine 100μg/ml投与時に,初めの小さな収縮反応に引き続き大きな弛緩反応が出現した.この反応はatropineにては抑制されず,hexamethonium, tetrodotoxin前投与により消失した.DMPPはacetylcholineと同じ反応を引き起こした.また,初めの収縮反応はprozosinにより,後の弛緩反応はpropranololにより消失した.したがって,近位尿道周方向筋切片は,acetylcholineのニコチン様作用によりshort adrenergic neuronの所属する壁内神経節が刺激された結果norepinephrineが放出され,α_1-およびβ受容体を介する2相性の反応を引き起こしたものと考えられた.更に,norepinephrine投与により収縮反応を引き起こした周方向筋切片にacetylcholineを投与すると,β受容体を介する急速な弛緩反応のみが出現した.以上より排尿時における近位尿道の弛緩機構は,排尿筋成分による縦方向の収縮が起り尿道が短縮すると同時に,short adrenergic neuronの関与によって周方向の弛緩が起こり,両者の相互作用によって増強されるものと思われた.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1986-10-20
著者
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