臨床実習における学生と患者の人間関係形成におけるプロセス : ベナー及びワトソン理論による分析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
"医療技術の目覚しい発達により解決可能な健康問題が増え,看護実習も健康問題解決志向である看護過程の習得を重視している.しかし近年,老いや死に対峙する高齢者や終末期患者に対する看護では,医療技術を駆使した問題解決よりも人間存在としての患者の苦しみに対処するヒューマンケアが重要であることが認識されるようになった.J.ワトソンらは,新しい看護のパラダイムとして「看護者」という人間が「患者」という人間の苦悩に「共に関与するもの」として関わるトランスパーソナルな関係形成を提唱している. 本研究は,看護学生が老人施設での実習において医療技術では解決不可能な問題を抱えた患者とどのように人間関係を形成していくか,それを通してどのようにヒューマンケアを学習していくかを明らかにすることを目的とする.実習場面に指導者として参加観察した後,学生に面接を行ない,その逐語記録を資料として,患者--看護者の人間関係形成のプロセスをワトソンの記述的現象学的方法を用いて分析し,その構造化を試みた.その結果,学生と患者は「出会い」「模索と葛藤」「可能性の発見(転換点)」「トランスパーソナルな関係」の4段階を経てヒューマニスチックな人間関係を形成していくことが明らかになった.学生は挫折や葛藤を繰り返しながら人間関係形成の接点をつかみ,患者の真のニーズに触れる瞬間を得,それを転換点としてフィーリングの交換が活発となり,ヒューマンケアに変容した.そして実習の終了頃には,双方の間にトランスパーソナルな関係を築くことが可能となる.高齢者,終末期の患者においては個々の問題解決よりも,看護者と患者がそれぞれ一人の人間として全人的存在に影響を与え合い,トランスパーソナルなヒューマンケアの中で共に成熟するものであった.それは看護教育の視点に大きな示唆を与えるものと言える."
著者
関連論文
- 大学生における感染症予防対策のための抗体価の測定と質問紙調査との関連性
- 仏教僧侶によるスピリチュアルケアの現状と展望 : 真言宗僧侶の終末期ケアへの関与に関する調査から
- 臨床実習における学生と患者の人間関係形成におけるプロセス : ベナー及びワトソン理論による分析
- 成人看護学実習におけるエビデンスについての学習
- フルブライト交換留学生としてアメリカで看護を学ぶ