『ヤコポ・オルティスの最後の手紙』に於ける二つのモチーフに就いて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イタリアに於けるロマンティシズムの文学運動が、外国文学の影響を受けて起ったものであることは今更云うまでもないことであるが、リソルジメント文学という言葉によって最もよく表わされているように、その運動の特色は、全く実践的、道徳的、かつ、政治的なものとなり、燃えるようなロマンティシズム精神は、「自由なる共和国イタリアの統一」という国家的、民族的理想と固く結びついたのであった。一七九六年から一八一五年までの歴史的事件、つまり、打ちひしがれた独立への希望が、イタリアのロマンティシズム運動を何よりも先ず愛国的、革命的なものとしたのである。この意味から、キニース・マッケンジーは、その論文『イタリアに於けるロマンティシズム』の中で次のように述べている。「フォスコロが彼個人の不幸とともに祖国の悲運をも歎き悲しんだところの超浪漫的な作品、『ヤコポ・オルティスの最後の手紙』に於けるこの二つのモチーフの結合は、イタリア・ロマンティシズムを解明する重要な鍵となっている」と。確かに、『オルティス』は、イタリア・ロマンティシズムの先駆的作品であり、その二つのモチーフは、イタリアに於けるロマンティシズム文学運動の方向を暗示している。更に、政治と愛とのこの二要因を追求することが、この作品の中核に触れることにもなるので、この論題を設けたわけである。
- 1959-12-30