家族としての国家 : メタスタジオのオペラにおける君主/父
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概要
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ヨーロッパでは1970年代後半から80年代にかけて、メタスタジオの作品についてイデオロギー的な側面から分析を行った画期的な論文が次々と発表された。その結果、オペラを社会から超然とした「自律的」な「芸術」とする古典的な考えから脱却し、それを社会的イデオロギーと手を携えて展開するダイナミックな文化活動として捉えるという、新しい解釈の可能性が切り開かれたのである。本稿はそれらの研究を踏まえた上で、メタスタジオの台本に現れる「家族」というイメージを中心にして考察を行う。メタスタジオは作品の中で「家族」というモチーフを頻繁に取り上げ、それを「国家」のイメージに投影している。ただし彼が描く「家族」とは我々が日常的に思い浮かべる近代的な家族、すなわち夫と妻、夫婦と子供が互いに情緒的な絆で結びつく、公とは切り離された、完全に私的な組織ではない。反対に、絶対的な権力をもつ家長に子供たちが服従する、国家の下部組織としての集団なのである。以下の論ではメタスタジオの世界における「君主」「父」「母」という三つの要素について検討する。そして王座と国民の「仲介者」を自任する宮廷詩人メタスタジオが、作品の中で「君主」と「父」のイメージをある時は重ね合わせ、ある時は全く異質なものとして表現することで、理想的な国家/家族像を描き出すことに成功し、絶対王権のイデオロギーを舞台上に体現したことを明らかにする。
- 2000-10-20