アリオストの『サーティレ』
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概要
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序 1517年から24年にかけて代表作『オルランド・フリオーソ』の改稿の合間に、アリオストは七つの諷刺詩を残し、それらは『サーティレ』として現在まで伝えられている。詩はすべて、兄弟親族や友人に宛てた書簡形式で書かれており、また諷刺詩特有の極端な攻撃や誇張や自己卑下が少ないことからも、語り手アリオストと作者であるアリオストの像を混同するような解釈が従来なされてきた。だが、実際の書簡にみえるアリオストの実像と比較した際に、情報については正確でありながら、正確の面において、『サーティレ』の語り手であるアリオストが、現実の詩人をわずかにずらした像にされていることがわかる。本論文では、『サーティレ』におけるアリオストの自画像を考察し、その自己変容を通じて、同詩の目指した詩学の一端を明らかにしたいと思う。
- イタリア学会の論文
- 1997-10-20