ゴルドーニ「避暑三部作」に見る女性像
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概要
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拙論「ゴルドーニ『避暑三部作』の構成」(「イタリア学会誌」39号、1989年)において、筆者は先に、主に戯曲構成の点からこの作品の特徴を論じた。その中では、登場人物の構成においても、先行する諸作品に現れる様々な人物像の、いわば典型といえるような人々が、非常に均整のとれた配置をされ、あたかもゴルドーニ喜劇の集大成のような観を呈していること、さらには、舞台設定とその移動においても、それまでの経験を十分に生かしつつ、新たな可能性を拓いたと見られるという点について指摘した。本論においては、もう一歩内容に踏み込み、主人公ジャチンタに焦点をあて、先行作品に登場する女性像と比較しながら、ゴルドーニの膨大な作品群中に占めるこの三部作の位置を探ってみたい。とはいえ、ゴルドーニのすべての作品における女性の描き方を総合的に論ずることは本論の主旨ではなく、まともとより紙幅の許す所でもないが、それでも代表作と呼ばれるもの、比較に値する特徴を持っていると思われる作品を、なるべく数多く取り上げて検討したい。従って、本文中で頻繁に言及する作品に関しては、専ら略号で記すことをお許し頂きたい。また、ゴルドーニが終生の目標とした「性格喜劇」の創造の中でも、女性の性格を描き出すことに並々ならぬ興味と情熱を傾けていたことは、作品群を概観しただけでも、量的、質的に明白であることも、改めて指摘しておきたい。
- 1991-10-20