ピエル・パオロ・パゾリーニのシンボリズムとレアリズム
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概要
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新前衛派の評論家R・バリッリはパゾリーニ(一九二二-七五)の小説「激しい生」を評して、完全に十九世紀の自然主義または真実主義の持論を適用して書かれた小説と定義し、一方コンティーニ、フォルティーニ、モラヴィアなどはパゾリーニの初期の詩集にフランスの象徴主義の影響を看取している。象徴主義と自然主義は文学史上、ともに十九世紀後半に誕生した文学運動であったにせよ、一般に互いに相入れない性格を有する二つの文学潮流である。たとえばゾラがその莫大な小説群とともにランボーやボードレールの詩を同時に書き、また逆にランボーが自らの詩集とともに、ゾラやゴングール兄弟のような小説を書いたなどということは到底考えられないことである。ところが一般にイタリアの批評界は、パゾリーニの作品の中にこの相反する二つの文学流派の共存を見ているのである。パゾリーニの作品を紐解いてみると、一般にパゾリーニの詩集はシンボルに満ち、詩の背後に必ずと言ってよいほど作者パゾリーニの存在が感じられるのだが、一方彼の三冊の小説は、まるで自然主義小説の「没個性の法則」の持論を適用して書かれているかのように、作品の背後にパゾリーニの存在は感じられないのである。そこで本論では、パゾリーニという人格の中に潜むこの矛盾にメスを入れ、シンボリズムからレアリズムの世界への詩人の困難な入場の過程を追ってみたい。
- 1985-03-30
著者
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