ボイアルドの恋愛観
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概要
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十五世紀のフェララで繁栄を極めたエステ家を軸に、宮延社会の中で自らがスカンジアーノ伯として生きたBoiardoが精魂込めたOrlando innamoratoの中に、彼の「恋愛観」の展開と実相を探ってみたい。特にここでは「純愛」を除くinnamoratoしたamoreの類型についてのBoiardoの概念に限定して検証する。Orlando innamoratoの表題に登場するOrlandoは、確かにこの劇中の主役には相違ないが、この英雄叙事詩全体を注意深く観察してみると、その中心的人間像は必ずしも一人の英雄個人ではなく、或る意味では、全体集団を表象する原初的な人物達の群像であることに気づく。これらの群像は、Boiardoが冒頭で言う「燃える魂」anima ardita(accesa)をもつSignori e Cavallieri達であり、何事にも絶えず「情熱の火」を心に燃やし続け、とりわけ、iraやamoreの要因によって動機づけられた人々の集団である。しかも、その個々の像の類型は決して一律ではなく、純粋な炎でいちずに燃える様々な魂の実像がInnamoratoの中の至るところに満ち溢れているのが一つの特色である。そこには如何にも人間らしく、著名な騎士の剣を、見事な鎧を、優秀な駿馬等々を是非とも所有したいという俗世的欲望に駆られ、極端から極端へと揺れ動く煩悩の虜になったルネサンス的人間の生きざまが描かれている。そして、これらの様々な煩悩の中でもBoiardoの恋愛観の基層を成す要因としては、欲望を誘発するiraとamoreとが考えられ、これが彼の最も強調したかった動機づけであるように思われる。そこで先ず、Boiardoのiraの取扱いをOrlando, Gradasso, Rodamonteの場合に見てみよう。
- 1985-03-30