「婚約者」に於ける作者マンゾーニと作中人物の関わり方についての考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
周知のように「婚約者」に先立って書かれた「カルマニョーラ伯爵」と「アデルキ」の二つの歴史悲劇には、有名な合唱(Coro)の部分を含んでいる。これは、当然、ギリシャ劇の伝統に倣ったものであり、マンゾーニのこうした作品に限らず、ギリシャ風の合唱が、近代の劇作品に取入れられることは決して珍らしいことではない。ただ、マンゾーニのこの合唱は、ギリシャ劇や、その模倣である近代の劇作品の合唱とは、幾分異なった性格を持っており、そこには、マンゾーニ個有の文学観に支えられた、ある工夫がなされている。私は、ここで表題に揚げた作者と作中人物に関係という、やや、抽象的な問題を探るに当って、まず、その導入のために、マンゾーニの合唱の持つ性格を明らかにしておきたい。マンゾーニの合唱それ自体は、批評の対象となることもむしろ少なく、いわんや、文学史上に大きな意味を持つといった類いのものでもなかろうが、そこに見られる発想は、言わば、極めてマンゾーニ風のものであって、私がこれから扱っていこうとする問題に関して、少なからぬヒントを提供しうると思うのである。
- イタリア学会の論文
- 1979-03-03
著者
関連論文
- レンツォとルチーアの周辺
- マンゾーニのcantuccio(片隅の場所)について
- 「婚約者」に於ける作者マンゾーニと作中人物の関わり方についての考察
- ジェルトルーデを巡って
- マンゾーニに於ける歴史其儘と歴史離れ