プロップのレヴィ=ストロースへの反論 : 『民話の形態論』をめぐつて
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概要
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ロシアの民俗学者ウラジーミル・ヤコプレヴィッチ・プロップ(一八九五-一九七〇)が『民話の形態論』初版を公表したのは、かれが弱冠三十二才、一九二八年のことであった。当時、ロマーン・ヤーコブソンらと共に詩的言語研究会(オポヤーズ)に所属していたプロップは、発生論的=審美的研究に先立って、形式レヴェルでの共時的記述の必要性を痛感していた。かれは、殆ど手つかずに放置されていたアファナーシェフの収集から、一〇〇のテキストを基礎に、形態論的アプローチを行うことにより、ロシア魔法民話(メールヒエン)の類型単位、すなわち、"機能"(=「筋の展開に対して持つ意義の観点から規定された、登場人物の行為」)なる不変項に基く構造単位、を体系的に開示して見せたのである。本書が世界的反響をひき起こすまでには、実に三十年を要した。すなわち、一九五八年の英訳刊行以来、それが民族学者や物語ジャンルの構造研究を志す文学批評家に与えた影響は絶大であって、「物語芸術(フイクシヨン)の理論へのフォルマリストの最も有力な貢献の一つ」と目されるに至ったのである。英訳に続いて、一九六六年に出た伊訳は、クロード・レヴィ=ストロースの論文「構造と形式。ウラジーミル・プロップの一著作に関する若干の省察」と、エイナウディ社からの要請でこの批評に対して書かれたプロップの反論「民話研究における構造と歴史」をも収録するという周到な配慮を見せている。その後、プロップへの関心は各国に広がり、ポーランド訳(一九六八)、仏訳二種(一九七〇)、ルーマニア訳(一九七〇)、西訳(一九七一)、独訳(一九七二)の他、邦訳(一九七二)も遂に出版された。本稿は、『民話の形態論』をめぐって展開された上記レヴィ=スロースのプロップ批判に対する、後者の反論を中心に概観し、併せて若干の問題点を剔抉することを目的とするものである。
- 1975-03-20
著者
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