イオンの水相|有機相間分配平衡の電気化学的理解

概要

論文の詳細を見る
水相|有機相 (W|O) 界面でのイオンの分配平衡は,目的イオン (i^z+) と対イオン (x^z-)がWとOの電気的中性を保ちながら,それぞれの標準 W|O 界面移動自由エネルギー (ΔG^o_tr)に従って界面を移動することによって達成されると考えて,i^z+ の W|O 界面分配比 (D) を表す理論式を誘導した.同理論式は,i^z+ 及び x^z-のΔG^o_tr,W 及び O 中でのi^z+ と x^z- とのイオン対生成定数 (K_ip),i^z+ と疎水性中性配位子 (Y) との O 中での錯生成定数 (K_st),O 中での錯体[(iY_p)^z+] と x^z- との K_ip によって構成されている.ΔG^o_tr,K_st を液液界面イオン移動ボルタンメトリー,K_ip を電気伝導度測定法によって決定し,それらを誘導した理論式に代入して求めた D は,分配実験で得られた D と一致した.一方,この研究成果を基に,親水性イオンのΔG^o_tr の決定法を提案した.更に,イオン選択性電極 (ISE) の液膜を O と見なせば,ISE 電位 (E_ISE) や選択係数 (K^pot_ij) は D や分配における選択係数 (Г_ij) と同様にΔG^o_tr,K_st,K_ip で表せると考え,E_ISE 及び K^pot_ij を D 及び (Г_ij) に定量的に関係付けた.
2002-12-05