位相文法による限量詞の表現
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
如何なる方式の文法に従おうとも、言語現象の微妙なふるまいの表現は限量詞に負うところ大である。例えば、車の中での会話として「ガソリンが-杯入っている」と「ガソリンが少し入っている」ではとられる意味がはっきりと異なる。この意味の差は使われている限量詞の「一杯」と「少し」の意味の差に由来する。両文から限量詞をとり除くと名詞と動詞のみからなる文「ガソリンが入っている」が機械的に得られる。この文を、両文は共に含意している。この例にみられるように、両文共に「ガソリンが入っている」に違いはないものの、ガソリンの入り方の量の差の表現に違いがある。文の骨組みを与える名詞、動詞の主要な品詞からだけでは文の値を近似的にしか決められず、微妙な意味の差の表現には限量詞が是非とも必要であり、限量詞の文法上の役割が重要であること明らかである。何を限量詞とするかの取り決め方は文法固有の方式により異なるものの本質的に重要な構成要素であることには変わりはない。限量詞の性質をはっきりさせるために、ここでは、文法構成要素を簡単化して、主要な要素としては、文S、名詞N、動詞Vを考え、その他は各要素の修飾詞としての限量詞Qのみを考える(参照1)。限量詞の性質である可算量や連続量などを表現するために位相を導入した位相文法を用い(参照2)、位相的性質によって表現できる連続性や極限性によって、言語現象としての限量詞のふるまいが、どのように表現できるかについて検討する。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1991-02-25