日本語の位相文法的記述
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
文は、名詞、動詞、他、いくつかの要素からなり、更に、接続詞などの合成作用を持つ要素により、複雑な文へと構成されていく。文の骨組みについての規制を与えるのが文法の役割である。ところが、より細かな現象の記述をすべく文法記述を続けていくと、必ず反例が見つかる。謂わば文法の役割の限界を示すものである。この種のことは良く知られたことで、構成的手法に内在する本質でもある。ここで提案する位相文法なるものは、この種の限界の本質に立ち入るものではなく、句構造文法の処理能力を、ほんの少し、つまり、加算濃度分から連続濃度分に拡張したものである。仕組みの点での従来の句構造文法との差は、書き換え規則の右側部分に連続濃度分のカテゴリの出現を許すことで、それ以外は全く同じである。従って、従来の算法が利用可能である。但し、拡張部分の意味を正しく記述する必要性のために、位相の導入を計る。一方、日本語の言語特性として、語順の自由度が比較的大きいことが上げられる。主格、対象格などの格レベルでの語順は、限られた数の文法規則で対処可能であるが、語レベルでの局所的な語順の自由度に対処するには、規則を増やす方法ではきりがなく、語順について比較的寛大な文法記述が望まれる。この点についても、位相的文法記述の利点が主張できる。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1989-03-15