線形方程式を解くための連分数法
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概要
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多項式の計算をする前に、その一部分の項を分母に持って行けるかどうかを考えるのは賢明なやり方であるといえよう。一番簡単な例としては、和1+x+x_2+…よりも(1-x)^-1の方がずっと簡単であるし、何よりもこの和は|x|≤1でのみ収束するが(1-x)^-1はx=1以外ではどこでも値が求まる。この考えを更に一般の多項式に用いたものがパデ近似である。私はかつて、この考えをリップマン・シュヴィンガー(LS)の積分方程式に用いて散乱振幅をヨスト関数とその虚数部の比に書きあらわした。ヨスト関数はヨスト解の原点での値であるが、リップマン・シュヴィンガーの式の積分核K_FはFredholm型なのでその逐次代入は必ずしも収束しない。これに対し、ヨスト解の積分核K_VはVolterra型なので逐次代入は収束する。この方法では、もとの積分核を分離可能な項の和K_F=K_V+ab^Tに書きあらわし、LS式をK_Vであらわしたのである。この考えを拡張して連分数法(MCF)を考え、三重陽子やへリウム3の計算を行った。本論文では行列(または積分核)が対称な場合に限り、先ず第2節でMCFについて述べ、第3節では悪条件(ill-conditioned)行列として知られるヒルバート行列を例にとって、ガウス法なら20×20行列で既に正しい答が求められないが、MCFでは200×200行列の場合でも正しい答が求まり、行列が大きい場合でも頑健であることを示す。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1994-03-07