トドマツのタネおよびメバエにあらわれるエールリッヒ試薬に陽性な物質についての生理的研究
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概要
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本報告は, インドール化合物の検出剤として使われている, エールリッヒ試薬に陽性な物質が, トドマツの種子のどこにいつごろあらわれるかを明らかにすると同時に, この物質の出現と実際の発芽との関連を調べた結果をとりまとめたもので, 結果はつぎのとおりである。1) エールリッヒ試薬と反応して赤紫色に発色する物質は, トドマツ種子の胚の幼根の先端にはじまり, ついで幼根の基部におよぶ。発芽した種子の場合, この物質は胚軸の表層にもみられる。2) この試薬と反応して, 幼根のそまる種子は, 置床後1週間目にあらわれ, これが実際に発芽するまでに要する時間は平均して2週間である。3) 低温湿層処理の過程では, 処理開始後15〜30日頃に急激に増加し, 30〜40日はゆるやかに増加する。低温湿層処理45日後に, この試薬によって幼根のそまる種子の割合は45日間処理後発芽条件に移してから1週間後の実際の発芽率に近い値をとる。いろいろな期間処理後5日間置床すると, この間に発芽したものを染色する種子に加えれば, 2週間後の発芽率とほとんど一致する。このことから前処理間に幼根に現われるエールリッヒ試薬に陽性な物質は発芽と密接な関連のあることがわかる。4) 胚を人工培養すると, エールリッヒ試薬に陽性な物質の現われるのと, 胚の伸長との間に密接な関連がある。また, この物質の生成には有気的条件が不可欠で, かつ, オキシダーゼ類の作用を阻害するα-ピコリン酸によって阻害されることから, この物質の生成は, オキシダーゼ類の作用に関連していることがわかった。5) エールリッヒ試薬に陽性な物質は, また, トドマツの若芽や, そのほかの樹種の若枝にかなりひろく含まれている。
- 日本森林学会の論文
- 1962-10-25
著者
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