森林の蒸発散が斜面流出に及ぼす影響 : 不飽和浸透理論を用いた数値実験
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概要
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斜面上の森林が流出に及ぼす影響を説明するため, 蒸散項をsinkとして考慮したRICHARDSの不飽和浸透理論を, 斜面長30mのモデル斜面の流出に適用して, 数値実験を行った。実験は林地斜面, 裸地斜面, 下半部が林地の斜面, 上半部が林地の斜面の4種類について行い, 林地からの消失は蒸散のみ, 裸地からの消失は地面蒸発のみとした。また, 日蒸発散量は初夏の快晴日を想定して10mm/dayとし, その強度は日射量に比例するものとした。実験結果から得たおもな知見は次のとおりである。1)林地斜面からの蒸散は土層中の広い範囲から分散的に水分を消失させるため, 地表面が激しく乾燥して蒸発が抑制される裸地斜面より多量の水分を消失させる。2)蒸発散のある斜面では流出ハイドログラフに明瞭な日変化が認められる。3)林地斜面では無降雨日が続くと, 蒸散損失の流出に及ぼす影響が小さくなる。4)流出ハイドログラフの形状は斜面下部の水分条件によってほぼ決定されるので, 流出の減少を支配し, 日変化の原因となるのはおもに斜面下部の蒸発散である。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 1986-12-25
著者
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