トラクタ・ロータリカッタの傾斜地刈払い性能
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概要
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わが国のみならず海外においても, 造林作業の労働生産性の向上を意図して, トラクタ造林機械の開発が期待されている。この報告は, クローラトラクタ・ロータリカッタの人工林伐採跡地の林地傾斜面における, 実際刈払い時の動力性能および刈払能力について, 実機による実験にもとづき検討をくわえたものである。1) クローラトラクタの笹生傾斜地におけるスリップ率は勾配に関係して実験式(2)から推定される(Fig.1)。2) ロータリカッタの地拵え地でのけん引抵抗係数はけん引速度の増加に一次的に正比例して漸増すると推定される(実験式(3), Fig.2)。3) 試験トラクタのPTO軸伝動効率は, エンジントルク5mkg以上ではほぼ一定値0.95程度となり(Fig.3), これをもとにほかの伝動効率を推定し総合すると, 総伝動効率は, 一般に採用されている0.7程度をとってさしつかえなさそうである。4) ロータリカッタ刃の切削抵抗力は, 刈払い時のカッタ刃周速に一次的に逆比例して減少し, 刈払い対象物によってその値がことなり : 灌木>密度大なる笹>密度中なる笹>草, 実験式(5), Table 2 から推定される(Fig.4)。5) クローラトラクタ・ロータリカッタの林地傾斜面における刈払い時所要トルクおよび出力は, 理論式(15);(23), (24)であらわされ, 上述の係数等をつかって計算により推定することができる。なおこれは, 無負荷時走行トルクおよび出力は勾配の増加にほぼ一次的に正比例して増大するのに対し, カッタ刃駆動トルクは勾配とは独立したほぼ一定の関係をしめすので, ロータリカッタ刈払い所要トルクおよび出力は勾配とはほぼ一次的に正比例するという笹生傾斜地における実験結果と, ほぼ近似した傾向をしめしている(Fig.5,6)。6) クローラトラクタ・ロータリカッタの刈払い時燃料消費率(l当り刈払い走行距離a, l当り等価刈払い面積A)は, 正味燃料消費率(Fig.7), 走行速度, 出力, 燃料の比重の関数とかんがえられ, 理論式(28), (29)であらわされ, これにより推定することができる。この推定値は実験値と近似した傾向をしめす(Fig.8)。7) ロータリカッタの切れ味は, わが国森林の地拵えで厄介視されている密生せる笹生地で, カッタ刃周速60m/sec前後以上すなわちBush Hogではカッタ回転数750rpm前後以上になると, もっともよくなるといってさしつかえないようである(Fig.9)。8) クローラトラクタ・ロータリカッタは勾配20°までの林地で, 地拵え・下刈両作業につかうことができる能力をもっているといえるようである。9) 50年生カラマツ伐採跡地の低木と草におおわれた林地で, クローラトラクタ・ロータリカッタによる地拵え作業と1人用刈払機による地拵え作業(刈払機7台7人, 日立機1台1人, 燃料給油1人, 枝条整理4人, 計13人1組からなる組作業)とを比較した結果, トラクタ作業は刈払機作業の数〜10倍(1人当り)程度の作業能力をもち, 約1ha/日の刈払能力があり, また下刈能力も同地での調査結果からほぼ同程度と推定される(Table 5)。10) もっとも, このトラクタ作業は, 地拵えでは, 刈払機作業が等高線方向に列をなして刈払ったのに対し, 一つの斜面ごとに渦巻状の走行刈払いをおこない(Fig.10-a), 下刈では, 直径(0.6mのトラクタ植穴掘機で植付けた2.5m前後の列間を走行刈払い(Fig.10-b)している。
- 日本森林学会の論文
- 1966-07-25
著者
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