林木のカルシウム代謝に関する研究(VI) : ポプラ葉部中に含まれる水溶態カルシウムのペーパークロマトグラフについて
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概要
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本研究はポプラの葉部中の水溶態Caについて, ペーパークロマト法を適用して各物質の分離確認を試みたものである。その結果つぎのことがわかった。1.展開溶媒はnブタノール・酢酸・水系(15 : 10 : 15)が最適で二重展開法によって良好な分離を得た。2.水溶態Caは15 : 10 : 15の展開溶媒によると6層に分離されるか同一溶媒4 : 1 : 2では3層に分離されるにすぎなかった。2.各未知物質を抽出, 再展開した結果, 6ケのスポットが認められた。これを下方からB, C, D, E, F, Gと呼ぶと以下のことが明らかとなった。i.B層にはC物質, D物質を含みC物質の含有量が大である。この場合原点残留物質がかなり認められるがこれはC物質, あるいはB物質と推定される。ii.C層にはE物質, F物質を含む, その含有量はE物質が大である。iii.D層にはB物質, D物質を含みその含有量はD物質の方が大である。iv.E層には, D物質, E物質, F物質を含みその含有量はE物質の方が大である。v.F属には, D物質, E物質, F物質を含みその含有量はF物質の方が大である。vi.G層には, D物質, E物質, G物質を含みその含有量はG物質の方が大である。4.上記各物質について検討したところ, E物質は無機イオン状Ca, F物質はグルコン酸Ca, G物質はグルコン酸-ラクトン-Caと推定された。B, C, Dの各物質からはリンゴ酸Ca, クエン酸Ca, 酒石酸Ca, コハク酸Ca, あるいはアスコルビン酸Caなどの存在が予想された。5.アリザリン法による発色から推定するとポプラ葉部中の水溶態Caはほとんど大部分がグルコン酸Ca, グルコン酸-ラクトン-Caと考えられ, 無機イオン状CaおよびD物質は微量, B, C物質については極微量程度含まれるにすぎなかった。6.試料の展開はトレーサー法では2〜3重, アリザリン発色法による非トレーサー実験ではさらに多重展開を試みなければ良好な結果は得られない。
- 1966-06-25
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