材木のカルシウム代謝に関する研究V : 温度変化がポプラさし木苗中のCaの分化形態におよぼす影響について そのI. 30℃と0℃における変動について
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概要
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植物体中におけるCaの特異な日変化は環境因子とくに光線量および温度の影響をうけて起るものと推定される。したがってCaの日変化による影響を明らかにするためにはこれらの各環境要因を規制した実験をおこなう必要がある。本報告はこのような主旨にそって、さきの光線量の問題にひきつづいておこなった温度変化に関する実験結果の一部を述べたものである。結果の概要は以下に示す通りであった。1.葉部においては30℃から0℃に移置した場合には一般にF-Iが増大してF-IIが減少する。0℃から30℃に移置した場合にはこれと反対の変動がみられた。2.葉柄部においては、中央部を除いてF-I、F-IIで葉部のような顕著なうごきは認められなかった。3.樹皮部においては30℃→0℃、0℃→30℃の場合にいずれも葉部のF-I、F-IIの増減と反対の傾向がみられた。4.葉部、樹皮部内では温度処理により短時間にF-I、F-IIの変動がおこった。そして長時間低温下に移置された場合にはAgingにともなって現われる変動と同様な変動を示す傾向にあった。5`全Caのうごきは木質部内では認められなかったが、葉部、葉柄部、樹皮部の各部間で相互的な移動の起ることが観察された。6.以上を総括すると本実験の温度処理においては日変化の場合の温度周期によって起るようなCaのうごきは認められないで、むしろ反対の関係が認められた。しかしAgingによる形態分化とは一致した変動を示しており、この点から本実験の結果は、温度変化によって起る特異なCaの形態分化および移動を明らかにしたものと考えることができる。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 1965-10-25
著者
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