気管支結核の新しい気管支鏡所見分類の有用性について
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概要
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気管支結核における気管支鏡所見は病期と治療による予後を表すものでなければならない。新しい分類法を提案し, その有用性を検討した。気管支鏡所見分類はType I(発赤肥厚型), Type II(粘膜内結節型), Type III(潰瘍型) ; IIIa(浅在性潰瘍型), IIIb(隆起性潰瘍型), Type IV(肉芽型) ; IVa(結節隆起性肉芽型), IVb(ポリープ状肉芽型), Type V(瘢痕型) ; Va(瘢痕非狭窄型), Vb(瘢痕狭窄型)の5型の基本型に分け, それに付随してType LN(リンパ節穿孔型)を加えた。この分類を112例の気管支結核症例に当てはめ, 分類した。対象は男37例, 女75例で, 治療の既往の有無によって3群に分けた。すなわち未治療例のグループAが63例, 治療開始から1カ月以上治療中のグループBが20例, 治療後再発例のグループCが29例であった。 病変の占拠部位は右側は48例で, 主気管支の関与が17例と最も多く, 上葉, 中間気管支がそれに続き, 左側は64例で, 主気管支の関与が47例, 73.4%と最も多かった。病型はグループAではType IIが3例みられ, この群に特徴的であった。しかし, グループAではType IIIが最も多く48例, 76%に見られ, うち34例はIIIbであった。グループBではType IIはなく, Type IIIも極めて少なく, しかもすべてIIIbであった。このことはType IIおよびType IIIaは治療により早期に消失することを示唆する。グループB, CではともにType IVとType Vbが占める割合が大きかった。Type Vaはどのグループにも1例も見られなかった。未治療の26例において, 気管支30病変および気管6病変について, 治療による経時的変化の観察を行った。Type II(3病変)とType IIIa(9病変)は, うち11病変が正常所見に, 1病変がType Vaとして治癒した。内視鏡的治癒に要する期間はほぼ全例で120日以内であった。Type IIIbは24病変で経過が観察され, うち18病変が治癒を確認しえた。これら18例のうち, 8病変は正常所見として治癒し, 4病変がType Va, 6病変がType Vbとして治癒した。治癒を確認するまでの期間は90日以内が8病変, 120日以内の合計が14病変であり, 120日より長いものが5例あった。Type IIIbの治療中にType IVがしばしばみられたことからType IVはType IIIbの治癒過程を示すことが示唆された。以上の結果から, 新分類は病期をよく表すとともに治療による治癒過程の予測が可能であり, 有用な分類法と考えた。
- 日本呼吸器内視鏡学会の論文
- 2001-05-25
著者
-
荒井 他嘉司
国立病院東京災害医療センター呼吸器外科
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荒井 他嘉司
国立病院機構災害医療センター
-
荒井 他嘉司
国立病院東京災害医療センター
-
荒井 他嘉司
国立病院機構災害医療センター:結核予防会複十字病院
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