イネ白葉枯病菌の微細構造と薬剤による形態学的変化
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概要
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ストレプトマイシン耐性菌の微細構造, 薬剤処理による培養菌の死滅過程および薬剤を根部から吸収させたイネの体内増殖菌の形態学的変化を観察した。本細菌の基本的構造として最外層に細胞壁, その内側に細胞質膜があり, 内部には繊維状の核様物質, リボゾーム, ポリゾームとみられる粒子および2種類の顆粒が認められた。細菌は分裂直前に細長く伸長し, 伸長と同時にまず核様物質が分裂する。ついで細菌のほぼ中央部の細胞壁に陥入が起こる。その後陥入は徐々に細胞内に深く切れ込み, 隔膜形成が起こり細胞質が2分されて分裂を完了することが認められた。供試薬剤, 2-amino-1, 3, 4-thiadiazole(ATDA)によって形成された本細菌の阻止円について, その周縁部細菌を観察したところ, 細胞質の電子密度は低下し, リボゾームの減少が認められた。細菌細胞質は各所で凝集する傾向があり, 不整形で膜のない破生間隙が生じた。細胞質が局所的に集合し, しだいに大きな集合体となり, その周囲に厚さ20-40nmの壁が形成されて球状構造に発達した。この構造は阻止円周縁部の細菌でのみ形成されるようである。球状構造は0.2μmで高電子密度の外層と低電子密度の内層によって包まれ, 内部は電子密度の高い物質が充満していた。球状構造に関する所見は他の属の細菌体内で形成される芽胞構造とよく一致したが, 本報告では芽胞類似構造と仮称した。ATDA吸収葉の道管中, とくに孔紋道管に侵入した細菌では変性がはげしく, 細胞質が体外に溶出していた。一方, らせん紋, 環紋両道管内の細菌では細胞内諸構造の変性が少なかった。侵入道管のちがいにより細菌の変性程度が異なることは, 道管の種類によって薬剤の量的差異があるためかもしれない。らせん紋道管に侵入した細菌の特徴として, 体内にエーテル可溶性の大きな顆粒(直径520nm)がしばしば観察された。
- 日本植物病理学会の論文
- 1973-01-01
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