日本におけるイネいもち病菌個体群構造のDNAフィンガープリント解析
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概要
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日本におけるイネいもち病菌の個体群構造を明らかにするため, MAGGYおよびMGR586を用いてDNAフィンガープリント解析を行った。1993〜1997年に採集・単胞子分離した278菌株(圃場菌株)および1976年に採集された22菌株(実験室保存菌株)を解析したところ, それぞれの菌株集団が70%レベルの相同性を有する2つのリネージ(Lineage)に分けられた。さらに圃場菌株における2つのリネージは実験室保存菌株における2つのリネージと1対1に対応した。以上の結果から, 現在の日本におけるイネいもち病菌集団には2つのリネージ(JL1,JL2と仮称)が存在することが明らかとなった。JL1は圃場菌株および実験室保存菌株のそれぞれ97%および77%を占める主要なリネージで, 日本全国に分布していた。一方, 1960年以前に採集された集団は少なくとも5つのリネージよりなるとされているが, JLl, JL2はそのうちの2つに相当した。このことから, 日本のイネいもち病菌集団の構造は1960年から1976年の間に大きく変化したことが示唆された。各リネージに属する菌系のイネ判別品種に対する病原性を調べたところ, リネージと病原性の間に関連は認められなかった。両プローブによるリネージ分類はほぼ同じであったことから, MAGGYはイネいもち病菌の個体群動態を解析するためのプローブとして有用と考えられる。
- 日本植物病理学会の論文
- 1999-02-25
著者
-
眞山 滋志
神戸大学農学部
-
中屋敷 均
神戸大学農学部生物環境制御学科
-
Don L.
神戸大農
-
Don L.d.
Kobe Univ. Kobe Jpn
-
草場 基章
神戸大学農学部植物病理学研究室
-
DON Le
神戸大学農学部植物病理学研究室
-
URASHIMA Alfredo
神戸大学農学部植物病理学研究室
-
土佐 幸雄
神戸大学農学部植物病理学研究室
-
Urashima A.S.
神戸大農
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